初めての外出?

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「待ってー」、お母さんの声が後ろから聞こえた。僕が側に居るのを知らずに外扉を開けた隙に僕は外に出てしまった。物心ついて初めて家の外に出て、何処に行っていいのか分からず、建物の下にうずくまっていた。そこに、お母さんがスリッパも履かず追いかけてきてくれた。こっちにお出でと言われた素直に抱いてもらった。今なら、ヤッホーって走り回るんだろうけど、小さかったからどうしていいか分からなかったんだ。

お父さんが「交通事故にあって死ぬこともあるから、絶対外に出さないように注意!」ってお母さんを叱っていた。僕の所為で申し訳ない気持ちになった。「ごめんなさい」お母さん。

犬さんや外猫さんと違って、僕は散歩したいとは思わない。家には、専用のトイレや食事&水飲み場、そしておもちゃもあるし、十分快適な生活なんだ。家も自由に走り回れるほど広いしね。内猫さんは束縛されて可哀そうにって思われるかもしれないけど、全然そんなことはないよ。たまには、書棚の上に寝たり眺めたりして退屈しないんだよ。まるでタワーマンションに住んでるみたいさ!

またね。

 

 

ウンチとオシッコ

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「この子にトイレ教えるのに1年間かかったのよ。大変だったわ。部屋中に新聞紙なんか敷いてさあ」。皮膚炎で動物病院に行ったときに、可愛い犬さんを連れてきたおばさんがしゃべっていた。「へえー、そうなんだ。」犬さんは賢そうだけどトイレは上手にできないんだと初めて分かった。僕は内猫として飼ってもらってから一回も粗相したことがないんだ。お父さんからも褒められるし、お客さんにも「こいつはすごいんだ!今まで粗相したことがないんだ」って自慢してもらっているよ。エヘン!

姉猫は外猫の生活が長かったせいか、なんと!お父さんの椅子やカバン、羽毛布団にもお漏らししたことがあるんだって。お父さんは「俺に恨みでもあるのか?」、お母さんは「あなたの匂い好きなんじゃない?」って冗談言ってた。お姉さんに聞いたら「何となく、したかったの」だって。深いわけはないみたいだなあ。

僕たちは匂いに敏感なんだ。身体に匂いが付くと獲物のネズミさんたちに気づかれてしまうからね。暗闇の中、忍び足でパトロールするのに匂いは厳禁なんだよ。だから、暇さえあれば身体を舐めまわして匂い取りをするのさ。なでられたり食事した後にするのが多いかな。申し訳ないけど人間や餌の匂いが付くからね。舌が届かない顔なんかは、手を舐めて拭くのをくり返してきれいにするんだ。

だから「トイレそのあとも」しっかりと砂をかけないと気が済まないんだよ。猫のきれい好きはハンターとしての本能なのさ。

今日は自慢話になっちゃった。ごめんね。

 

 

えっ!取ったのー

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目覚めたら何か股の間がスースーする。軽くなったような気もするし、少し痛い気もする。動物病院はワクチンや風邪で行ったことはあったけど、奥の部屋に入れられたのは初めてだった。「迎えに来るからね、頑張ってねー」ってお母さんは行ってしまい。ひとり病院に置いてきぼりにされた。不安で怖かったけど僕も幼児じゃないんだから、しっかりしなきゃと、泣かないでいた。まもなくお医者さんや看護師さんに囲まれた。その後は何も覚えていない。

麻酔が覚めてボンヤリしていたら、玄関のほうでお母さんの声がした。「迎えに来てくれた!」、思わず泣きそうになった。多分、小さな声でミャーって言ったんだろう。看護婦さんが優しく起こしてくれ、お母さんのところに連れて行ってくれた。

どうやら「去勢」されてしまったらしい。「可哀そうだったわね、痛かったかしら?」とお母さんが言うと、お父さんは「仕方がないよ、かえって可哀そうなことになるからな。同性としては気の毒に思うけど」という会話を車中でしてた。

まあ、仕方がないよ、ずうっと家に置いてくれるんだから。可愛がってもらえるし、お嫁さんはあきらめようと思った。その代わりお母さんに、思いっきり甘えよう、お父さんにはいっぱい遊んでもらおう、そして美味しい食べ物をおねだりとしようと、猫なりに戦略を練ったんだ。

でも、どこか寂しい気持ちになった。そんな気持ち、男の子だったら分かるよね。

またね。

 

プロレスごっこ

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「とりゃー」「かかってこい」と勇ましい声が響いたかは分からない。お父さんが操る「ジジ」との真剣勝負だ!

ジジは映画「魔女の宅急便」に出てくる黒猫だ。この家には僕の来るずうーっと前から住み着いていたらしい。もう自分では動かないぬいぐるみなんだけどね。そのジジが年の割に元気に襲いかかってくるので必死に闘ったんだ。押さえ込みや足蹴り、反則技の噛みつき何でも繰出した。僕はまだチビだったから、部屋の端っこまで飛ばされた。負けるもんかと飛びかかっては吹っ飛ばされた。怖いと思ったこともあったけど、お父さんは手加減してくれてたみたいだ。

幼少期に兄弟や友達とじゃれ合うことで、大事な狩りの練習や相手に対する手加減を覚えるって何かの本に書いてあった。もちろん、僕は字が読めないからお父さんから聞いた話だけどね。「あれしちゃいけない、これしちゃいけない」って育てられた人間の子は、相手の痛みの分かる優しい心をどこかに忘れてきたのかもしれないね。猫の世界でも「こっちに来るんじゃねー」なんて脅されるけど、テリトリーってものを守っているだけなんだ。自殺まで追い込む「いじめ」なんて猫の世界では聞いたことないなあ。

そうやって思いっきり遊んでもらえたから、ストレスもなかったし伸び伸びと育つことができたように思う。お母さんは「乱暴な猫になるからやめてー」って言ってたけど、そうかな?僕は男の子だから大目に見てほしいな。

またね。f:id:tnekoji:20191220135832j:plain

 

 

 

 

 

譲渡会?!

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「シャー」ってすごい形相で脅された。初めてガラス越しにお姉さん猫と対面したんだ。怖くはなかった。僕は、はじめて見る姉猫の可愛さに「キュン」となった。その後も何回か「シャー」だった。家の人は「やっぱり無理かなあ」って言ってるみたいだった。置いてもらえないのかなあと、すこし不安になった。でも、この家のお母さんが優しくしてくれるので思いっきり甘えることにした。

近くで猫の譲渡会があるので、僕を出してみようということになった。僕は別のお家に貰われていくのかなあと不安だった。お母さんは、貰ってくれるお家あるかしらって心配顔だ。それなら、このまま置いてくれよと僕は思いっきりかわいい顔で訴えた。それが通じたのか、ワクチン接種の後すこし具合が悪くなったら、お母さんが一緒に寝てくれた。僕は布団で寝るのは初めてだった。緊張したけど、とても嬉しく幸せいっぱいになった。旅行中だったお父さんからLINEが来た。「一緒に寝たら手放せなくなるよ」って。その通りになった。譲渡会の前日、担当の方に電話を入れてくれた。「すみません、自宅で飼うことにしました」ってね。

お詫びにと、義理堅いお母さんは譲渡会の手伝いに行った。帰ってきたら、出さなくてよかったわ、他の子と比べても断然かわいいから、すぐもらわれる所だったと話してくれた。それは、どうかなと思ったけど、とても嬉しかったな。

姉猫とは少しずつだけど距離が近づいてきた。受け入れてくれそうな優しい目で見てくれたんだ。大きなゲージも買ってもらい、子猫らしい賑やかでヤンチャな生活が始まった。

助けてー 必死だった

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暑い夏過ぎだったな。そう、去年の9月はじめだった。お母さんが、突然出ていけ‼と叫んで兄弟姉妹4匹が追い出されたんだ。お母さんのおっぱいは貰えないし、エサの捕り方も知らない僕たちは、文字通り路頭に迷う猫たちだった。必死にお母さん代わりになる人を探して泣き叫んだんだ。だって、そうしないと死んじゃうからね。まだ生まれたばかりだったから死ぬのは早いと思ったんだ。近所を「助けて‼」って泣き叫んで徘徊したんだ。そしたら、どうしたの?って出てきてくれた女の人がいた。僕は、この人しかいないと思って、必死にすがり付いたんだ。

「目ヤニで目が見えないみたい、痩せてるねー、どこから来たの?」って話しかけてくれた。お腹減って死にそうと伝えたかったが言葉は通じない。ポンと車に乗せられて連れて行かれれたのは動物病院だった。「猫風邪やダニなどですね」と診断されて薬をもらった。お金がかかったけど「大丈夫、心配しないで」って励ましてくれた。やさしい人に拾われて安心したよ。帰ってから暗い小屋のようなところに入れられてエサを貰った。きれいな水や猫用のトイレも用意してくれた。一週間ほどしたら眼もはっきり見えるようにって、ふらついていた足もしっかりしてきたら、母屋に入れてくれた。粗相しないように頑張ったおかげだね。

心配だったのは、このまま家に置いてもらえるかだった。家の人も迷っているみたいだった。というのは、先輩のお姉さん猫が住んでたんだ。ケンカしないか、うまく生活できるか心配だったんだね。

そんなことで、僕の新たな生活が始まった。これから色んな話をするから読んでね。